株式会社環境研究センター

環境調査

アスベストの種類

  アスベスト(石綿:せきめん、いしわた)とは工業的利用価値のある繊維状けい酸塩鉱物の総称で、一般には下表の6種の繊維状形態をした鉱物をさします。

  中でもクリソタイル、アモサイト及びクロシドライトの使用が圧倒的に多く、 これら3種の石綿を商業的石綿と呼び、またアスベスト分析の対象となっています。
  昭和50年9月に吹きつけ石綿は原則禁止となっていますが、 石綿含有(5%以下)吹き付け材として昭和55年まで(一部昭和63年まで)、耐火・保温・防音などの目的で製造されていました。1%を超えて石綿を含む建材などの製品は近年まで禁止されていませんでした。

  また、工業的に利用されている天然鉱物の中には石綿を不純物として含むおそれのあるものがあります(タルク、バーミキュライト等)。これらの天然鉱物にはトレモライト及びクリソタイルが含有されるおそれがあります。

 アスベスト名鉱物名理想構造式備考
蛇紋石族クリソタイル(白石綿)クリソタイルMg3Si2O5(OH)4商業的石綿
角閃石族クロシドライト(青石綿)リーベック閃石Na2(Fe2+>Mg)3Fe23+Si8O22(OH)2
アモサイト(茶石綿)グリュネ閃石(Mg<Fe2+)7Si8O22(OH)2
アンソフィライトアンソフィライト(Mg>Fe2+)7Si8O22(OH)2 
トレモライトトレモライトCa2(Mg>Fe2+)5Si8O22(OH)2 
アクチノライトアクチノライトCa2(Mg<Fe2+)5Si8O22(OH)2 

クリソタイル

  今まで最も多く使用された石綿。白石綿とも呼ばれる。
  平成16年10月に1%を超えて含有するセメント板、化粧スレートなどほとんどの製品の輸入・製造・使用が禁止された。

クリソタイル写真、分散染色法、浸液屈折率1.55
クリソタイル写真(標準物質、屈折率1.550)
クリソタイル写真、分散染色法、浸液屈折率1.55
クリソタイル写真(吹き付け材中、屈折率1.550)

クロシドライト

  鉄を多く含む青色の繊維で、青石綿とも呼ばれる。
  耐酸性が強く、また強度が高いが耐熱性はクリソタイルやアモサイトに比べ同等かやや劣る。鉄骨への吹き付け石綿として、また耐酸用の製品として使用された。平成7年4月にクロシドライト及びクロシドライトを1%を超えて含有する製品の輸入・製造・使用が禁止された。

クロシドライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.68
クロシドライト写真(屈折率1.680)
クロシドライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.70
クロシドライト写真(屈折率1.700)

アモサイト

  淡茶〜灰色の繊維で、茶石綿とも呼ばれる。
  クリソタイルより硬く弾力があるため、スプリングファイバーとも呼ばれる。強靭で、耐熱性はクリソタイルやクロシドライトに優る。保温用の製品として単体で成型されたり、つなぎ材としてけい酸カルシウム板に混入し使用された。平成7年4月にアモサイト及びアモサイトを1%を超えて含有する製品の輸入・製造・使用が禁止された。

アモサイト写真、分散染色法、浸液屈折率1.68
アモサイト写真(屈折率1.680)
アモサイト写真、分散染色法、浸液屈折率1.70
アモサイト写真(屈折率1.700)

アンソフィライト

  大規模な工業的利用は行われていないが、明治時代より昭和45年ごろまでアンソフィライトを産出する鉱山が国内で操業していた。

アンソフィライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.618
アンソフィライト写真(屈折率1.618)
アンソフィライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.640
アンソフィライト写真(屈折率1.640)

トレモライト

  大規模な工業的利用は行われていない。
  タルク、セピオライト、バーミキュライトなどの天然鉱物に含有されることがある。

トレモライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.620
トレモライト写真(屈折率1.620)
トレモライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.640
トレモライト写真(屈折率1.640)

アクチノライト

  大規模な工業的利用は行われていない。
  アクチノライトに関しては、通常のX線回折分析ではトレモライトとの区別が出来ないため、両者を識別せずトレモライトと表現されることが多い。

偏光板による複屈折性の確認

  アスベストは天然鉱物で複屈折性を持っているため、光路に偏光板を挿入して回転させることにより、分散色の変化が確認できる。ロックウールとトレモライトとの識別時などに有効。

トレモライト写真、分散染色法、浸液屈折率1.620
偏光板による複屈折性の確認(トレモライト屈折率1.620)

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アスベストの分析方法

  アスベストの分析は大きく分けて固体を対象としたものと気体を対象としたものの二つがあります。前者は建物などに使われている吹き付け材や建材を対象とし、後者は石綿を含有した建材を含む建物の解体や石綿を含有した吹き付け材の撤去時などに、石綿が飛散していないか調べるために主に行います。
  平成18年9月1日より石綿含有率の基準値が1%超から0.1%超に改められることをうけて、分析方法についての新たな通達(基発第0821002号(平成18年8月21日))及び通知(基安化発第0821001号(平成18年8月21日))が出され、基発第188及び基安化発第0622001号が廃止され、JIS A 1481により分析することになりました。また石綿を含有するおそれのある天然鉱物の分析法として基安化発第0828001号及び基安化発第0828002号(平成18年8月28日)が通知されました。
  平成20年2月6日に、新たな通知がだされ、分析の対象にアクチノライト、アンソフィライト及びトレモライト(以下トレモライト等という。)が明示的に加えられました。 基発第188号及び基安化発第0622001号はクリソタイル、アモサイト及びクロシドライトを対象としていました。よって、基発第0821002号の2及び基安化発第0821001号の1(平成18年8月21日)により、石綿が0.1%を超えて含有していないと判断されたものについては、トレモライト等を対象としてJIS法による分析調査を行う必要があります。
  平成20年6月20日に、JIS A 1481が改正されました。

  基発第0821002号により指定された分析方法

  1. JIS A 1481「建材製品中のアスベスト含有率測定法」
  2. 上記1と同等以上の精度を有する方法
    1. (1)基発第188号 別紙3-3の「位相差顕微鏡を使用した分散染色法による分散色の
          確認」による定性分析の方法
    2. (2)その他別途示す分析方法

  また基安化発第0821001号の1で、上記2の(2)「その他別途示す分析方法」として、基安化発第0622001号 2の(3)の1のイの「位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析」があげられています。しかし、基発第188号及び基安化発第0622001号はクリソタイル等のみを対象としており、その後の通知で分析対象にトレモライト等が明示的に加えられため、JIS A 1481によってトレモライト等を対象とした追加分析を行う必要があります。

  これまでの主な改正点

  • 定性分析(アスベストを含むかどうか)
    1. 基発第188号:顕微鏡観察だけで行う
    2. 基安化発第0622001号:顕微鏡観察とX線回折装置を併用する
    3. 基発第0821002号及び基安化発第0821001号:顕微鏡観察とX線回折装置を併用する。
  • 試行回数
    1. 基発第188号:n=1(1検体1試料とする)
    2. 基安化発第0622001号:n=3(3回繰り返す:1検体3標本とする)
    3. 基発第0821002号及び基安化発第0821001号:n=3
  • 定性分析時のアスベスト有無の判定方法(基発第188号以外ではX線回折装置による定性スキャンの結果をあわせて判定する)
    1. 基発第188号:20視野でアスベストの分散色が確認できるかどうか
    2. 基安化発第0622001号:3標本のうち一つ以上の標本で、1000粒子中に分散色を呈する繊維が10本以上あるかどうか
    3. 基発第0821002号及び基安化発第0821001号:3000粒子中に分散色を呈する繊維が4本以上あるかどうか
  • 定量
    1. 基発第188号:簡易定量(1%を超えて含むかどうかを調べる)
    2. 基安化発第0622001号:基底標準吸収補正法による定量(何%含むかを調べる)
    3. 基発第0821002号及び基安化発第0821001号:基底標準吸収補正法による定量
  • JIS A 1481(2008)に関する留意点
    • 残渣率が0.15以下とならない試料に対して、三次試料の調整により適用可能となった
    • 石綿が5%を超えて含まれる試料の定量分析も基底標準吸収補正法で行うこととなった。
    • 吹き付けバーミキュライトの分析方法が加えられた。
    • 吹き付けバーミキュライトを除く石綿を含有するおそれのある天然鉱物およびそれらを原料とする製品は対象としない

  基安化発第0828001号及び基安化発第0828002号の対象となる石綿を含有するおそれのある天然鉱物とその分析法

粉状のタルクX線回折法により標準試料と比較
粉状のセピオライトX線回折法により標準試料と比較
粉状のバーミキュライト前処理によりバーミキュライトの結晶面間隔を小さくした後、X線回折法により標準試料と比較(吹き付けバーミキュライトはJIS A 1481(2008)に含まれる)
粉状の天然ブルーサイトX線回折法とDTG法による

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位相差・分散顕微鏡法(低温灰化-分散染色法)について

  アスベストが含まれる建材が使われている建物の解体やアスベストが含まれる吹き付け材の撤去の際には空気環境のアスベスト測定が必要となります。

  現在は空気環境のアスベスト測定は位相差顕微鏡を用いて行っています(PCM法)。しかし位相差顕微鏡では観察している繊維状物質がアスベストかどうかを判別できないため紙繊維なども計数されてしまいます。よって実際のアスベスト濃度よりも高い値が検出されます。つまり現行法ではリスクを過大に評価し、コスト面での負荷要因となる可能性が考えられます。

  一方で、アスベストとそれ以外の繊維を区別して計測できる方法として分散染色法があります。この方法を用いるには粉塵が捕捉されているフィルターを透明化するだけでなく低温で燃焼・灰化し、捕捉された粉塵がスライドグラスに直接のった状態にする必要があります。
  当社の保有するプラズマリアクターはこの低温灰化のための装置で、酸素プラズマによりフィルター及び有機性粉塵を低温にて燃焼します。この後分散染色法によりアスベストかどうかを判別しながら測定し、正しいアスベスト濃度を求めます。

  対象石綿がクリソタイルの場合は分散浸液1.550のみで可能ですが、対象石綿がクロシドライト及びアモサイトの場合は分散浸液1.680と1.690で、トレモライト等の場合は1.618と1.620での観察が必要なため、サンプリングに使用したフィルターを裁断して複数試料を作成します。

透明化処理
フィルターの透明化処理
プラズマリアクター
プラズマリアクター

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建材・吹き付け材のサンプリング

  アスベストの分析はごく微量の試料で可能ですが、吹き付け材の吹きつけ時のむらやサンプリングむらをなくす目的で1つの対象につき3箇所から採取します。 この際、壁、はり、天井など場所に応じて成分が異なる可能性にも留意します。

  吹き付け材や保温材等やわらかい材料の場合は一箇所あたり9cm3(3cm×3cm×1cm)程度、成形された建材の場合は一箇所あたり100cm2(10cm×10cm)程度採取し、3箇所から採取したサンプルを1つの容器にまとめて入れます。

  採取するときは、霧吹きなどでサンプリング対象を湿潤させて粉塵の飛散に注意し、鋭利なカッターなどを用いて行います。 安全のため、防塵マスク(区分:RL3)、安全ゴーグル、使い捨ての作業用手袋などを使用します。さらに衣服・頭髪などへの粉塵の付着を防ぐため使い捨てのフード付のつなぎ服を着用すれば万全ですが 、雨がっぱなどで代用し、使用後にホースなどを用いて水をかぶればほとんどの粉塵は洗い流せます。サンプルを入れる容器としてはチャック付のポリ袋やビニール袋などが適しています。

  採取後は、採取場所周辺からの粉塵の飛散を防ぐための措置を講じなければなりません。簡単にこれを行うにはクリアーラッカーなどが適しています。

  サンプリングのまとめ

  • 3箇所から採取する。
    • 吹き付け材などの場合は一箇所あたり9cm3(3cm×3cm×1cm)程度
    • スレートなどの建材の場合は一箇所あたり100cm2(10cm×10cm)程度
  • 3箇所のサンプルを一つの容器にまとめて入れる。
  • 安全対策:粉塵の吸入のほか、高所からの転落などには十分注意する。
  • 採取場所からの発塵を防ぐ対策を行う。

  当社では、サンプリングもうけたまわっておりますので、ご要望がおありの方は是非ご相談ください。

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